笠森観音と懸け造りにおける「貫」

08 27, 2011
笠森寺(笠森観音) Kasamori-ji (Kasamori Kannon)
Kazz日本全国古(いにしえ)の旅
笠森観音 朱印
懸け造り。(かけづくり・懸造り)

日本には実に多くの「懸け造り」建築があります。

当ブログでは懸け造りといえば「投入堂」、投入堂といえば懸け造り。
完全解剖と名をうち一年近くにわたり投入堂を徹底的に掘り下げてきました。おかげさまで好評をいただいています。
懸け造りの最高峰を極めた投入堂はさておき、こうしたエントリーを続けながらも先日世界遺産になった平泉から近い達谷窟毘沙門堂(たっこくのいわや・びしゃもんどう)や超マニアックな寂光不動など懸け造り好きが派生していき、いろいろと見て回っています。

ちょっと前ですが、こんなところに行って来ました。

千葉県長生郡長南町にある「笠森寺(かさもりじ)」です。
まず、最初に名前なのですが、ここは「笠森寺」ではなく、「笠森観音(かさもりかんのん)」といった方が知名度が高いのではないかとおもいますが、正式には「笠森寺」だそうです。
東京に住む自分にとってはお隣の県なので丁度良いドライブコースになります。
こうした建築物には興味があまりなかったのですが、やはり投入堂の影響か、見ただけで何だかワクワクします。
笠森観音1
ところで、「投入堂をあれだけ掘り下げてるんだから、手抜きはするなよ・・。」
と言われそうで恐いのですが、・・
ここも意外と面白い建築物です。

この笠森観音の最大の特徴は日本で唯一の「四方懸け造り」つまり、通常の懸け造りに見られるような斜面に建つ建築物ではない。ちょっとした小山の上に懸け造りの土台をそのまま、ズンと組み上げて造ったものなのだ。
その名の通り、四方は地形などに遮られてはいないのだがいかんせん木などが視界を邪魔しており、遠方まで見渡せるとは言い難い。
こうした建築物は空撮が栄えるのだが残念ながらそんな金はない。(笑)

そのかわり細部を見ていこう。
この笠森観音は、もともと投入堂と同時期の平安末期の建築物らしいが、惜しいことに焼失してしまい、現在の建物は1592年頃の再建ものになる。
笠森観音2
国の重要文化財で、建物自体の総合的なデザインは素晴らしい。
この正面のかなり急な階段が特徴だ。左上に変形のL字型に登っていく。
笠森観音 階段
中世の再建になるとはいえ中々古い建築物である。
何でも投入堂と比較するのが悪いクセだが、この時代になると水平と垂直を殊更意識した造りになっており、貫などの技術が使われる。外側は石材で固められているが、埋め込まれた土壌は柔らかそうだ。
元々は平安末期の建築であるので、それを強襲した再建であれば何となく現在の建物とは違う造りの筈であるのだが・・。このころの建築の再建というのは、限りなくオリジナルを追求していくのか、時代に合わせて再建していくのか難しいところだ。できるだけオリジナルに忠実にしてもらいたいが、そうもいかないのであろうか、難しいところだ。
笠森観音 土台
おおっ、確かに斜面の角度はかなりの斜度である。懸け造りの組み上げ方も素晴らしい。

「貫(ぬき)」の技術。

ところで、この「貫」については当ブログの「日本一危険な国宝」シリーズでも取り上げようとしているのだが、投入堂が日本の懸け造りにおいて最古級であるとすると、こうした「貫」みたいな建築技術は当時の最先端を行くものであると考えられることからドンドン取り入れられていくはずである。
例えば、この笠森漢音のオリジナルは古代、平安末期のいわば投入堂と殆ど同時期に造られている。
懸け造り部に関しても、こうした技術の地方色がどう建築に現れているのか研究の余地があるが、この再建された笠森観音がオリジナルと寸分違わぬ構造だとしたら、建築者は規則正しく並ぶ貫や柱の形状に美や拘りを見いだしていたのかも知れない。「貫」で造られた構造美は懸け造りにおいて整然さを成し、構造的な美しさを醸し出している。

そう考えると面白い。
これをみるとやはり投入堂の主要柱に取り付く斜材などは、厳密に計算された上に造られたのではないな。と言う印象をこの組み上げられた懸け造りを見て思ってしまう。
柱1

国内の殆どに見られる貫による懸け造りのベース構造。

「貫」が広く一般的に使われ出したのは中世だと聞くが実際はどうなのであろうか。
見たところ投入堂の主要柱のベース部には「貫」は使われてはいない。
穴に水平材を差し込むことによりかなりの剛性が得られるが、加工が大変だ。特に懸け造りのような斜面で凹凸があるところに使用するのはかなりの技術が必要だ。
穴に差し込むという大前提を考えると、ちょっとした起伏の変化により貫の水平が保てなくなり、少しの差が全体のバランスが崩し建物の歪みを発生させる。
基本的に楔(くさび)をうち振れ防止などの対策は取っているが、自分的には投入堂のような噛み合わせのような継ぎ方の方がフレキシブルに対応でき、ズレもなくシックリ来るのではないかと思うのだが・・。
また、自分は逆に投入堂のように噛み合わせた柱と水平材(斜材)がなぜ無いのだろうか。ということをいつも考えている。「いかにも組み上げて造りました。」的な懸け造りより、「めちゃめちゃ大変だったけど何とか建てましたよ。」的な投入堂の方が何となく人間臭くて好きになってしまう。(笑)
柱2

国内では投入堂のみ(?)に見られる主要柱の噛み込み継ぎの斜材。

けれど何となくわかる。この時代いかに困難な場所に、いかに綺麗に造り上げるかが建築者の腕の見せ所ということを考えると、むしろ貫に代表される技術を用いたこちらの方がアピール度は高いと考えるべきであろう。そういう時代であったのかもしれない。
笠森観音 入り口
さて、話を戻すが、笠森観音の正面(入り口)方向は多少見通しが効くが、後の三方向はお世辞にも良いとは言えない。
ただ、やはりお堂に上がれるというのはポイントが高い。
一週グルリと回ると何となく落ち着くというか・・。お堂の雰囲気、木の匂いなど五感で感じる部分は人を落ち着かせる要素があるのか、しばらく色々見て回った。
笹森観音 垂木
垂木の様子。
古建築を見るときは必ずここを見てしまう。
笠森観音 5
四方懸け造りなので一応高台にある感じは肌で感じる。お堂内は勿論撮影禁止だ。
笠森観音 広重
パンフレットにある二世安藤広重の浮世絵で描かれた笠森観音。
この画からすると何となく見通しが今よりも良いような・・・。

最後になるが、笠森観音で御朱印を貰うとき、「どちらからいらしてくださいましたか。」と声を掛けられた。
それから一言二言たわいもない世間話をしていった後、「ごゆっくり見ていってください。」との言葉に少し感動してしまった。
それからしばらくこの貴重な建物をゆっくりと見て回った。

笠森観音。国内唯一の四方懸け造りという珍しい構造、一見の価値有りです。


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