最強アイテム?数寄の究極 天下の三肩衝 唐物肩衝茶入 銘「初花」

02 07, 2012
唐物肩衝茶入 銘「初花」 Karamono katatsukityaire mei HATSUHANA
Kazz日本全国逸品の旅
初花18
突然だが、天下の三肩衝(さんかたつき)と聞いてピンとくるであろうか?
まして、その三肩衝を言えることが出来る人は、少なくとも茶道に嗜みがある人に違いない。(笑)
天下の三肩衝。所謂コレ茶道に使う「茶入(れ)」である。
そして、天下の三肩衝とは、「初花(はつはな)」「新田(にった)」「楢柴(ならしば)」この3つの茶入のことである。
今宵のエントリーはそんな三肩衝のうちのひとつ「初花(はつはな)」
こいつをエントリーしよう。

茶道具なんて当ブログらしくないって?
いや、いや、この手のモノって初エントリーになるのですが、意外と数寄、いえ、好きなんです。
小さい頃から茶道を習っていた母の影響で、嫌々ながら相手をさせられていたこともあるけれど、そんな環境だから自宅の部屋の周りには茶道具がいくつもあり、気がつくと遊びながら茶筅で茶を点てていた。勿論そこに格式高き道具はなかったが、意外にも茶道具には親しみを持っていたのです。

されど、今宵の唐物肩衝茶入 銘「初花」、実はまだ本物を見たことがない・・。

さて、時代が大きく違うとはいえ、現代においてひとつの嗜好品、つまり「モノ」が国を動かすことが考えられるだろうか。
ましてや、こんな小さな茶道具。
しかし、この時代は少なからずあったんですね。

自分も大概のモノ好きだが、この「初花」が存在していた時代はそもそもモノに対する執着のレベルが違う。
中でも茶道具というのはその最もたるモノで、おそらく、こうした茶道具を巡る様々な逸話は、現代では到底考えられない話の数々でもあり、その中の話では、命の代償に茶器を渡すことで自らの命をとりとめたり、かたや命をかけて茶器もろとも自爆した人間も居たぐらいだから、その凄まじさたるや想像を絶するところがある。
初花03
話が前後するが、当時名を持った武将は同時に優れた茶人でもあった。
茶の歴史を紐解くとそれはそれは長い話になるが、もともと茶は薬として扱われており、ここでいう点前を持って客人をもてなす現代に通じる茶席とは違う。その原型が見られるのは室町時代のことであり、ここから所謂作法を伴う茶というものが確立していったと言える。この頃から武将の間でも爆発的に茶が広まった。
特筆した力を有しながらも+αとして「茶」という教養も必要だったからである。ただ傲慢で力が強いだけでは下の者はついてこない。人間としての魅力は著しく偏ったものであってはならないということがいえるのだ。
同時に茶は当時の社交の場であった。現代で言えばそれはゴルフのようなものであり、上手い者も下手な者も茶を通してコミニュケーションをはかったのである。
「点前ひとつ出来ずに何が・・」
といわれたかどうかは別として、そうした場に茶が必要とされたのは確かなのである。

茶を点てる。すなわち点前には数々の道具がいる。優れて魅力のある道具は例外なく個性的で美しく希少価値が高い。また、その道具に纏わる数々の背景がある。
お父さんの道具自慢じゃないが、やはり人が集まれば自慢が始まる。
点前の場とて、それは決して例外ではない。
茶とは精神的な素の対峙。それであっても亭主と客人との間の中でも欲求のやりとりが無いわけではない。
「一期一会」
茶席などでは亭主と客人の他に道具との対話もある。故に同じ道具が何度も何度も茶席に姿を現すことは基本的にない。一生に一度しかお目にかかれないような素晴らしい道具との対話もまた一期一会なのである。
客人は亭主が持つ素晴らしい道具に目を奪われ、亭主もより良い道具を用いて客人を持てなそうとする。その対峙に欲求の深層心理が働くのだ。
「これは、これは、たいそうなもので・・・。(羨ましい)」
「いえ、いえ、滅相もない。(謙遜)」

いずれもそこにあるのは・・・・・

「より良い名器が欲しい。」

・・こうなるのだ。
実力が無い者が道具に頼るというのは良く聞く話だが、この時代、身分の高い連中はこぞって銘のある茶器を求め、中でも高級茶器の価値は一国以上にも値していたという。

そして、このような人達は類して、こう呼ばれていた。

「数寄者」(すきもの)と。
付藻 初花 新田
茶道具のランク
昔まだ幼き頃、自分は茶器における最高のアイテム(あえてこう呼ぶ・笑)というのは「茶碗」だと思っていた。
まぁ、ピンキリの話になると異論はあるところなのだろうが・・。
中でも「茶入」というのは最高レベルにあるアイテムであり、将軍でさえ茶入の争奪戦に巻き込まれたぐらいだから凄まじい争いだ。戦の褒美に茶入を要求し、一国の褒美を蹴ってまで、執着した武将もいるという。
茶入の価値は遙か一国を超える場合も珍しくはないのだ。

ところで、ここで取り上げる「初花」は茶入。濃茶の際に抹茶を入れる器だ。
サイズは高さ8.4センチ、口径4.6センチ、底径4.7センチ。注目すべきは重量が僅か140グラムしかないことである。全域に渡り2ミリ程度で作られており、強く握ると潰れてしまいそうな感覚があるという。
薄さは技術力の象徴でもあり、例えば古い須恵器や土師器など、古代からの器は薄く、軽いほど良いとされてきた。この「初花」も重量から考えるとかなり薄く、高度な技術製法が織り込まれている。初花はもちろん日本で造られたものではないが、輸入品ということも加味すると、当時としては相当なアイテムであったということが想像に難しくない。
付藻茄子と初花7
ところで、突然だが「付藻茄子(つくもなす)」という茶入を御存知か。(CG左)
「流転の茶入」との異名をとる伝説の茶入「付藻茄子」
流転という意味ではこの初花も決して負けてはいないが、この付藻茄子、茄子型のラインは茶入では最高のものとされ、中でもこの「付藻茄子」は名品中の名品であり伝説の茶器である。
この付藻茄子は現存し、現在世田谷の静嘉堂文庫が所有しており、何年かに一度一般公開される。(2013年公開予定)
冒頭にも述べたが、初花は実物を見たことがないのだが、この付藻茄子は実物を見たことがある。
確かに独特の雰囲気は持ち合わせている。が、正直「これが伝説の付藻茄子かぁ・・」と感慨深いところはあったのだが、当時は同時に公開されていた「曜変天目茶碗」の方に目がいってしまい付藻茄子の奥深さを感じることができなかった。
この付藻茄子、初花もそうだが、とにかく当時の茶器には伝説がつきまとう。
伝説というのは大概尾びれ背びれなんかが大きく広がって俗っぽくなってしまうのが常で、事の真相はものによってはハッキリとしないまま伝説のみが一人歩きしているところがあるようだ。
そんな伝説の中でも、付藻茄子が戦火に見舞われた大坂城から粉々のまま救い出されたというのは有名な話である。現在の付藻茄子もX線写真で確認するとバラバラになったものを漆で接いであり、綺麗に修復している。実はこのとき見つかったのが初花と並ぶ天下の三肩衝のひとつ「新田」だったのだ。ちなみに救ったのは徳川家康。この新田も割れているものを接いである。
本来は破棄となる殆ど形の残っていないバラバラになった茶入を大勢で何日も探し、それを修復してまで手元に残すとは、それだけで相当なものであったことを伺わせる。
これ以上に茶入れに纏わる話は俄には信じられない伝説の数々だが、こうした茶器を巡る劇的な争いは研究者によって様々な角度から考察されていることも付け加えておく。
初花02
今更説明無用だと思われるが、肩衝とはここのこと。↓
初花5
付藻茄子などの極端に下がったラインとは違い全体的に強い印象を与える怒り肩風の張り出し。(実際はほぼ水平)天下の三肩衝でも初花は全体が最も優雅なラインと言われる。
初花と新田1
・・普通ここまでやるか・・笑
乗りかかった舟なのでちょっと比較してみるが、左「初花」右が「新田」である。(新田は、ここではラインだけ。)
まぁ、同じ肩衝とはいえこれだけラインが違う。こう見るとやはり新田のラインは撫で肩で優しい印象を受ける。
はじめは初花のラインが好きだったが、こう比較してみると新田も悪くない。
こうなると興味は三肩衝最後の一つ「楢柴」だ。明暦の大火により消失した楢柴とは一体どんな茶入なのであろうか。

信長・秀吉・家康 稀代のビッグネームの手に収められた茶入
初花は、織田信長、豊臣秀吉、徳川家康、こうした時の権力者に所有された茶入としても有名だが、その中でもこの初花を含めた三肩衝に特に拘った男が居る。
豊臣秀吉その人だ。
名品中の名品、天下の三肩衝「初花」「新田」そして、「楢柴」
この三つの茶入れはそのどれもが名品中の名品であり、一度手にしたらどうしたって手放せない。そこに生まれる人間の欲は様々な事件を呼び、伝説となった。それこそ、この三つの茶入を手にすることは「天下を取るより難しい。」といわれていた由縁だ。
そう言われると燃えるのがこの秀吉という男だ。
結局秀吉はこの三肩衝の茶入を手中にし、北野大茶会にてこの三肩衝をズラリと並べその「権力」を誇示したという。さぞかしご満悦だったであろう。
ただ、秀吉といえどこの天下の三肩衝の本当の価値を見いだせたかどうか、それはわからない。
後に千利休が「侘茶」を持って精神世界を追求し、茶の湯を昇華させたが、皮肉にも時の権力者の秀吉に睨みをきかされ、双方平行線のまま利休は切腹せざるを得ない状況に追い込まれた。
天下人ですら刀を持ち込めない茶室の「静」なる空間は、それこそ戦の「動」とはまったく持って相対する正反対な空間でもあり、人間を成長させる場として、特に秀吉のような立場を持つ人間には必要であった空間だ。服こそ着てはいるが、自らを素とし、精神的な裸と裸の付き合いが必要とされる茶室は、それだけで特殊な空間であることに間違いはない。
一畳半にまで縮小された極狭の空間。高価な茶器もなく、一輪の花で飾られた究極の素。かつてその全てを黄金色に施した秀吉からすれば、茶の何たるかを無言のまま利休に教えられていたのかも知れない。
初花ポスター2
現在、この「初花」や「新田」の一般公開の話は聞かない。
ただ、茶道具に興味がない人も、これが公開されたら見に行ってみてはどうか。もし間違ってこのブログに辿り着き、ここまで読んでいただけたなら何かの拍子に思い出して欲しい。
自分もこの茶入を見て何か感じることができるかどうか、天下人・秀吉の気持ちになってみたいものだ。

初花は足利義政が天下に先駆けた春の初花を想い名付けたらしい。

銘「初花」

素晴らしい銘ではないか。

もうすぐそんな季節がやってくる。

ⓚCG Kazz zzaK (+あい。)



2 Comments
By TKS07 25, 2015 - URL [ edit ]

/7/11~8/23まで、「初花」は東北歴史博物館の「徳川将軍家と東北」展に展示してありましたよ、9/12~10/25からは秋田県立博物館に行くそうです。
尚、パソコンからの返信は拒否設定しております。

By Kazz07 25, 2015 - URL [ edit ]

TKSさん こんにちは
情報ありがとうございましたー!

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