きっと振り返らずにはいられない。美しさの三重層。国宝 大法寺三重塔

04 14, 2012
大法寺 三重塔 Daihouji sanjyu-no-tou
Kazz日本全国古(いにしえ)の旅
大法寺1-1
さて、前回の安楽寺八角三重塔いかがでしたでしょうか?
日本に唯一の八角三重塔で、非常に貴重な建築物です。その建築美もさることながら、何と言っても「八角」ですから。(笑)国宝建築、とりわけ「塔」に興味がある方は足を運んで損はありません。是非。

そして、安楽寺八角堂を訪れたなら、少し時間をかけてここにも足を運んでください。
こちらも・・凄いです。
今回は個人的にも日本で最高峰の佇まいを魅せると思わせる実に美しい正統派三重塔の登場です。
信州国宝第2弾、国宝 大法寺三重塔をエントリーしましょう。

国宝建築に興味がある方はもちろん、単純に観光としてもおすすめの場所です。
繰り返しになりますが、「塔」に興味がある方は「必見」です。
この三重塔は「塔」と名のつくものの中で、あらゆるジャンルを含めても個人的に日本で最も美しい「塔」のひとつではないかと思います。
あくまで、個人的意見ですが・・。

では、早速いってみましょうか。
まず、この三重塔がある場所は、長野県青木村。大法寺にあり、前回エントリーした安楽寺からはそれほど離れていない距離にあります。
前回、この長野県上田周辺は古建築の宝庫だといいましたが、八角三重塔といい、この大法寺三重塔といい、これだけでも素晴らしすぎるのに、実はまだ続々あります。(笑)
まぁ、それらのエントリーはまたの機会に譲るとしても、まずはこの個人的におすすめの大法寺三重塔、じっくり見てみましょう。
大法寺4
京都や奈良といった超有名な観光地と違い、この大法寺三重塔を見に大挙して押し寄せてくる観光客が想像できるかと言えばそうではない。どちらかというと本当に静かで、雰囲気のある場所にあり、全てにおいて「ゆっくり」と「鑑賞」することができます。自分が見た時は僅かに観光客は一人。落ち着いたものです。

拝観料を払うと雰囲気のある大法寺の観音堂がすぐ目の前にあるのでまずは中を見ましょう。ちなみにこの観音堂も重要文化財です。加えて、この観音堂内の須弥壇も重要文化財であり、なかなか立派なものです。
観音堂自体は屋根が新しいだけで他は趣のあるものであると思いますが、この時点で横目には三重塔がチラチラしているので集中できません。はやる気持ちとともに気になるので早々に移動します。
三重塔は遠景で見ても美しさが際立ちます。
チラチラとは言いつつも、すでにしばらく見とれていました。
大法寺7
大法寺の見所は、ほぼこの三重塔に集約されます。
まずは正面でとらえます。階段がやや急なので結構な角度で下から拝むように見ます。
だいたいこの時点で、もう、ただの三重塔でないことがわかります。
大法寺5
そして、裏手に回り二層目を平行に見てみます。塔としては決して古くはない室町時代の建立でありながら、風格と共にある繊細でシャープなラインは強烈なオーラとなって存在感とともに視覚に訴えかけます。

「すげぇ・・。」

ロケーションが加味されず、建物単体でこれだけ強烈な印象を受けたのは投入堂以来だ。
この塔は、20mにも満たない大きさで、決して大きい塔ではない。
例えば、大仏殿や大寺院のように大きさで圧倒するのではなく、あくまで繊細に構築された美しさで圧倒する。
そして、その繊細さとともに、この塔の美しさは何と言ってもまず屋根の反りにあります。
よく観察すると、初重は僅かに四端だけを反らせる控えめなデザインであるのに対し、二重目は中心部分から緩やかに四端を反らせ、三重目は一気に反りをかけます。重厚さから軽快さを表現した素晴らしい意匠です。
要は、和様(初重・二重)と禅宗様(三重)の混合ともいえるのですが、板葺きの大法寺は瓦葺きと違い稜線のラインがきわめてシャープなため、それが全体の輪郭として塔そのものを際立たせているようです。板葺きの屋根を持つ塔は、五重塔を含めても日本では数少ないのでそれだけで貴重な存在ですが、こうした意匠は日本ではさらに少なく数例であると思います。
五重塔の場合と違い三重であるので見た目のバランスがもろに出てしまうのではないでしょうか。
いい意味で誤摩化しが効きません。
大法寺屋根3
ちょっと「塔」における意匠バランスの話をしますと・・・。
あえてシンプルに解説するためにシンプルCGを使用しますが、よりメリハリを付けるとだいたいこんな感じになるようです。
また、階層自体の大きさも上層に行くに従って微妙に小さくなっており、下から見上げたときの遠近感によって塔を実際より高く見せる視覚効果があるようです。
屋根に関しては既にお話ししたように、初重の軒ラインにやや平行面があり、二重目はその平行面が少なくなり、三重目は中央部にやや残りますが、印象としては中央部から一気に反る感じが見受けられます。
大法寺逓減率
見た目通り。(笑) 左から、逓減率 小・中(大法寺)・大

自分が力説する大法寺三重塔の「美塔ぶり」をここで取り上げますが、こうした大きさの比率は一般的に
「逓減率」(ていげんりつ)なんて言います。
この逓減率は一目瞭然とも言えますが、この逓減率の寸法がその外観の美しさに大きく影響しています。逓減率が少ないと(つまり大きさの比率変動が少ないと)胴長・寸胴に見え、逓減率が大きすぎると華奢過ぎるといった具合に、この逓減率のバランスと前述した屋根の反りや大きさの比重をどう加えるかで塔自体のシルエットが決まります。これらを考え設計、構築していく。棟梁の腕の見せ所でもある訳です。

・・ただ、考えにくいのですが、世の中には、この三重塔を「醜い」という人もゼロではないでしょう。
そこにあるのは、「何を持って美しいとするか。」という永遠のテーマであり、答え無き論点でもあります。
こうしたものはあくまで好みであり、中には、
「オレは安定しているフォルムの方がいい。」
と逓減率の低い方を指示する人もいれば、
「いいや、限界まで突き詰めた折れそうなラインに建築美学を感じる。」
と、いう風に、逓減率の高い方を指示する人もいます。
十人十色で女性の好みと同じでしょうか。この辺りは現代と同じで、考え方に色々あることと思います。
最低限言えることと言えば、「塔」である以上、強度的なものもしっかりと考慮しないといけないので、あまりにも細すぎる塔が敬遠されるのは言うまでもありません。
大法寺9
その点、この大法寺三重塔はどうでしょうか?これ以上細くなると弱々しいだけになってしまい力強さが感じられなくなるのですが、その両方をギリギリのラインで保ち、ほぼ完璧といっていいほどのプロポーションじゃないでしょうか。
好みという点でも万人が美しいと感じる最たる逓減率は最上層まで約1/2。塔が最も美しく見えるという黄金比を数字も証明しています。
大法寺7
細部に目をやると、手抜きの建築は面取りや細かい木目の合わせなどが雑に組み合わされていますが、この大法寺三重塔はそうしたところに全く手抜きが感じられず、全てのパーツが一体化しています。
「仕事が違います。」
大法寺 11-12
ところで、この大法寺は大阪四天王寺大工四郎某ほか小番匠七人により造られたそうですが、記述がこのようにあるだけでこの大工、四郎・・という棟梁(?)の素性がよくわからない。
墨書から大阪の四天王寺の大工一派がこの塔を建てたのは間違いないと思われるが、これはよほどの集団であったに違いない。本家と思われる、例えば四天王寺の五重塔を見ても何度か火災などにあっており、この大法寺の一派がどのようなかかわり合いがあるのかイマイチ不明なところがある。そもそも、どうしてわざわざ大阪の地からこの地で塔を建てることになったのであろうか。こうしたことも含め、一体この集団がどういった一派であるのか、知りたいことと、できればこの大工一派が造った建築というのを見てみたいと思わせる。
いずれにしても素晴らしい仕事である。

さて、一般的にこうした塔は平地に建立されることが多いのですが、この大法寺三重塔は山の中腹に建立されており、三重塔の裏手は起伏があります。
そのためそこに上がることにより、上から、しかもアップで見ることができます。
屋根の特徴や、階層の細かい部分まで観察できるので、こうしたものを外観上から考察しようとしている方にもうってつけの教材になることでしょう。
現在は素木色の大法寺三重塔ですが、初層の手先を見ると着色のあとが見えます。オリジナルは豪華な塗りを施した塔であったはずですが、こうして見るとケバケバしさが無く、現状の色の方が雰囲気に合っていると思うのは自分だけでしょうか。
大法寺2
外観上気になる点がひとつ。
屋根の痛みが結構激しいのです。ところどころめくれている部分もあり、この痛みは近年中に吹き替えられてもおかしくないレベルです。
前回の安楽寺八角三重塔は屋根が吹き替えられた直後ぐらいに見に行ったので、塔の印象がガラリと変わって残念な思いをしました。
「真新しい」と言う点で貴重な機会かもしれませんが、この三重塔は個人的には現在の苔が薄ら生えた「枯れた具合」が最高に美しいと思っています。
瓦葺きと違い板葺きの場合結構早くいい具合になりはしますが、屋根を葺き替え新しくなると若干印象が違うと思いますので、こうした感じがお好きな方は早めに目に焼き付けることをお勧めします。
大法寺8
ここまで来て、あまり遠景を撮影していないことに気がつきました。多分夢中でシャッターを切っていたのではないかと思います。(笑)

それにしても本当に美しい塔です。
この大法寺三重塔は、あまりの美しさに誰しもがその場を去りがたく、必ず振り返ることから

「見返りの塔」

と呼ばれているそうです。

確かに。
その美しさに自分も振り返らずにはいられませんでした。

皆さんは、振り返らずにいられる自信がありますか?

SIGMA SD15 17-50mm F2.8 EX DC OS HSM

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