3センチの力。国宝 白水阿弥陀堂屋根葺き替えリポート2

06 12, 2012
白水阿弥陀堂2 Shiramizu amidadou2
Kazz日本全国古(いにしえ)の旅
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さて、前回に引き続き白水阿弥陀堂の屋根葺き替えリポートを簡単にエントリーしよう。
前回は覆屋に入る前までだったので、今回は入ってから。
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・・・とその前に、今回の白水阿弥陀堂に使われた栩葺の板材なんですが、どのくらいの枚数が使われていると思いますか?(答えは最後まで読んでください。)
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SDIM1366.jpg
本線に戻りましょう。(笑)
今回の修理は屋根の葺き替えと同時に縁板の修理も行う。見たら殆どの縁板が外され新しい板に付け替えられている。垂木などはそのままで見た目も痛みは無い。
入り口から指示に従いヘルメットを付けてやや急な階段を上がると入ると阿弥陀堂の屋根へ出る。
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上へ出ると屋根を取り囲むように通路がグルリと一周していて、そこを歩けるようになっている。もちろんこれだけ近いので細部まで見渡すことができる。ただし、この通路の高さはちょうど軒の上。見ることができるのは屋根材の部分だけで垂木群を見ることはできない。ちょっと残念だ。
白水阿弥陀堂10
「おおっ」
入って大きさに圧倒。
大きすぎて全体的なイメージが伝わるかわからないが、その姿はまさに「小型のピラミッド」という感じだ。
四面の状態は最も葺きが進んでいるところで80%ぐらいで、反りの稜線部分を残すのみ、というところと、殆ど葺かれていない部分とまちまちで、見学する分には両方の状態がよくわかる。
ただ、葺き替え作業は10月頃の完成ということで、真夏の時期を経てということを考えると大変だ。貴重な国宝の葺き直しということで最後まで頑張っていただきたい。ご苦労様です。

さぁて、では、せっかくもらった貴重な機会。早速細部を確認してみよう。
白水栩葺1
白水阿弥陀堂の葺き材は国産の椹(サワラ)で長さは約24センチ前後、手前側と奥側の厚みは異なっており、重ねられる奥側は4.5ミリ前後、表面にさらされる部分は約6ミリで、幅は12センチから15センチのものが使用されます。
説明書きにはそうあるのだが、見た目の幅が15センチ以上のものもありそうだ。
ところで、「板葺き」の国宝は数々あれど、杮葺きなどの建物は結構ありますが、白水阿弥陀堂の様な「栩葺」の国宝建築は日本ではここ以外ありません。(確か。笑)僅かに仁王門としては京都の光明寺にあるようですが、それをあわせても僅かに2例。それだけ珍しい屋根の葺き方なのです。違いは葺き材の厚み。材自体が結構しっかりとしており、曲がりが効かず当然出来上がりも硬質でカッチリした印象があります。
白水 屋根構造3
というわけで、kazz zzak(+あい。)恒例のたいしたことないCGの出番で、白水阿弥陀堂の屋根構造を見てみることにしよう。でも、実はCGにするまでもなく、それほど難しい構造ではないのかもしれない。結構シンプルだ。
横材とする地板の上に直接葺いていく。ただ、いくら重ねているとは言え、細かくて吸収の良さそうな杮葺きとは違いこれだけ厚みのある椹を使っているので隙間から雨水などが浸入しないのだろうか。
白水233
実際の葺き方はこのような感じである。10列に一枚の銅板が葺かれるようだ。
白水阿弥陀堂基本屋根構造
さらに角度を変え、梁などを入れると実際にはこんな感じだと思われる。
今回の葺き替えに関しては、単純に葺き替えだけの作業の様で、その下の野地板?(横材)部分に関しては痛みの激しいものだけが取り替えられているようで、殆どの場合そのまま使用されている。
ただ、部分的に取り替えが必要な痛みの激しい部分があり、真新しい部材が入っている。
白水阿弥陀堂12
驚いたのは、この横材のサイズが思いの外バラバラで最低限の加工しかされていないことだ。「角材」という意識が当たり前の自分にとってこれは意外だった。
白水阿弥陀堂は明治時代に廃堂寸前まで追い込まれるほど痛みが激しかったが、関係者の尽力によりそれを免れ、大幅に修理が施され現在の姿を保っている。
つまり、屋根の主要な部分に関しては、殆どの部材が明治の修理の際に直された部材と思われ、地材に関しては思ったより痛みは激しくない印象だ。まだまだ全然イケる。
SDIM1347.jpg
ただ、この栩葺板の下の横材について驚いた点がひとつあった。
それは、おそらく現在では考えられないほど整形の精度が悪く、各スパンがバラバラで、なおかつ部材によっては、通常捨ててしまうような形状が歪(いびつ)な木材で構成されている。
「おおっ、こんな材まで使うのか・・。」
ちょっとビックリした。
白水屋根構造13
気になる軒先。特に四隅はこういう感じで葺かれている。もちろん材の寸法を見極めその場で調整される。当たり前だが、事前に機械的に計算された材を当てはめるだけのモノとは違いその都度微調整が必要だ。
全体的な葺き方の順番としては、軒先を全周にわたり葺き、真ん中部分を上側に葺き、最後に四隅の稜線を調整しながら葺いていく。
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既に葺き済みの面とこれからの面。非常にわかりやすい。
白水234
職人さんは一枚一枚の高さ調整とともに黙々と竹釘を打ち込む。忙しい中、ありがとうございました。
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嬉しいことに一部横材を外して(取り替えるため)いる面があり、僅かだが白水阿弥陀堂の屋根裏構造が確認できる。こんな感じになっているのか・・。
IMGP0602.jpg
さて、内部が見える部分で気になったのだが、ちょっとこれを見ていただこう。
白水阿弥陀堂は東日本大震災の影響をもろに受けダメージを負っている。
ちょっと確信は持てないが、この柱や垂木のズレはその影響だろうか?
見た目でも結構動いており、地震の強さを如実に物語っているように見える。
もしこれが地震による影響で、建物に起きた致命的なズレだとすると大変である。
仮にこれを修正していくと、全体の材の一部一部を動かすことになり、相当な作業となる。
元々こういうものは接合部に遊びみたいなものがあり、地震などでは多少動くことにより建物の崩壊を防ぐように出来ている筈であるが、これは許容範囲を超えているのか、素人目ではわからない。
竹釘
ところで、
今回の葺き直しにどのぐらいの椹が(枚数)が使われたと思いますか?
という冒頭のクイズの答なんですが、
答えは、約「80,000枚」(!)
だということです。
単純計算で一面20,000枚かぁ・・・・。えらい数だ・・。
当たり前だけれども、これらの材は機械で整形しているのではなく、全て職人さんの手作業により一枚一枚作られているのだ。本当に気が遠くなるような作業だ。
国宝の歴史は同時に修理の歴史でもある。
どんなに構造的に優れようが、強固な材を使用して構築されようが、何百年とその姿を維持するのは不可能であることは言うまでもない。
文化財を直接的に守る人に感謝したい。優れた職人さん無しに現存する文化財は語れない。
そう思い、ありがたく見学させていただきました。

そして、写真上の竹釘。お土産で頂きました。前回のリポートにもあるように、この竹釘を参加者が試し打ちするブースがありました。自分も試しましたがなかなか慣れないと難しいものです。
説明によると、この竹釘は現在の日本では京都の丹波地方の「たった一業者のみ」が生産しているとのことです。驚きです。
この竹釘。おそらく白水阿弥陀堂を構築する中で最も小さな部材であると思います。
思えば凄いものです。
僅か3センチのこの小さな部材で葺き替えの屋根材80,000枚を固定し、しいてはその部材で構築された屋根を持って50年間この建物を支え続けている。
僅か3センチではあるが、この部材無くして建物は50年は持たず、なければ、剥がれ落ちた屋根の一部から雨水などが浸入し、早々に建物を崩壊させるでしょう。
そういう意味では「最も小さくして、最も大きな力を持つ部材」なのかもしれない。

僅か3センチの強大な力。
人生にも応用できそうな・・今回最も勉強したのはそこかもしれない。
screenshot_117.jpg
今回は初めてこうした屋根の葺き替え作業の見学会に参加しました。
日頃から当ブログに遊びにきていただいている常連さんからは、「やけにアッサリじゃん。」と言われそうですが。やりだすとキリないんですよ。(笑)でも、これからもこうした見学会に参加していきたいと思ってます。

白水阿弥陀堂の艶姿を再び目に出来るのは今年の10月頃。
今度は浄土庭園に浮かぶその全景を目の当たりにしたい。


今回の見学会におきましては、お忙しい中、貴重な機会を作っていただき、白水阿弥陀堂はじめ、関係各位の皆様にお礼申し上げます。



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By 07 08, 2017 - [ edit ]

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