比類無き造形美!?『日本一複雑な屋根』を持つ神社を『日本一単純』に。『紙の神』を祀る福井県越前市 大瀧神社

09 06, 2014
大瀧神社扉3

建物記ファイル№0055
大瀧神社
otaki jinjya

さて、
日頃から国宝建築を見てはエントリーを行う当ブログですが、面白い建築であればもちろん国宝に留まりません。
そんな中、「日本一複雑な屋根」を持つと言われる建築があるんですが、ご存じでしょうか。
screenshot_1473.jpg
まっ、写真上がそれなんですけど、正面から見ると何となく違和感はあるのですが、いたって普通・・・そうでもないわけなんですよ。
ところが、横に視線を移すと・・・
screenshot_1471.jpg
「ぐおぁ、何ですか、これは?」
ってな具合で、凄いことになってます。
入母屋造りに千鳥破風に唐破風。また入母屋に唐破風・・・一体何がどうなって、こうなってしまったのだろうか?
というわけで、当ブログのテーマでもある『建築はエンターテインメントだ!』を軸に、今回はこの
「日本一複雑な屋根を持つ、大瀧神社」を「単純」に「分かりやすく」エントリーしていこうと思います。
screenshot_1472.jpg
福井県越前市。この越前に全国でも唯一と言われる「紙の神」を祀る神社がある。それが大瀧神社だ。(岡本神社)
この地、越前に古くからある言い伝えによると、それは、今から約1500年ほど前の話。

この村に流れる岡太川の上流に突如として、それはそれは綺麗な姫が現れ村人にこう話しかけたそうだ。
「この地は谷間で田畑が少なく生計を立てるには苦労するであろう。しかしこの地は綺麗な水に恵まれておるので紙を漉けば良いであろう。」
と言い、その技を伝授したそうだ。この姫に村人は問いかけたが「岡太川の川上に住む者」とだけ言い残し、忽然と消えたという。村人はその通りに紙造りを始めるとその紙はたちまち評判になり、その後この地は全国でも有名な紙造りの里になった。村人はたいそう喜び、この姫を「川上御前」として祀ったそうだ。


こうした「川上御前」伝説が残るこの越前に紙の神様を祀るために建てられた大瀧神社は江戸時代後期に現在の場所に建立されました。周りを木々が取り囲むとても静かな環境にあります。
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駐車場から少し広めの境内に入ると森林浴そのまま、木々の匂いが感じられます。
本殿・拝殿は一段高い部分に建っており、階段を上がるとすぐに見えてきます。
screenshot_1502.jpg
冒頭でも触れましたが、大瀧神社。正面から見ると・・・ただの神社じゃないという匂いは漂っていますが、まだこの段階では普通なんですよね・・・。(笑)
この大瀧神社は元々が「流造り」として生まれたんだろうけど何らかの理由により現在の姿になったんだろうね。この経緯について詳しくは不明です。
大瀧神社=屋根みたいなところがあるのですが、屋根の話しに入る前に、日本の主な神社(本殿)の基本的な造りを説明すると、大体五つに(様式)分類されます。神社の五大造りとでも言いましょうか。
まずは、
「春日造り」(かすがづくり)
「大社造り」(たいしゃづくり)
「神明造り」(しんめいづくり)
「住吉造り」(すみよしづくり)
そして、「流造り」(ながれづくり)
この五つです。(もちろんその他にもあります。)
中でも出雲大社(大社造り)や伊勢神宮(神明造り)などに代表される地域独特の形式や、春日造り、流造りなど一般化によく見られる形式など神社の形式というのは実に様々あり、実に面白い。それほど難しくはないので少しだけでも理解すると鑑賞において一層楽しめることと思います。
では、話を戻すと、この大瀧神社の場合は正式に何造りになるのでしょうか?
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正解は向拝付きの「流造り」向拝とは屋根が手前側に延びた部分のことでお参りするときに丁度上に来るところ。(笑)
日本の神社では一番多い形式です。例えば上のような、こんなのですね。近所にありませんか?
ここまで来て、「えっ、大瀧神社とは結構違うじゃん?」と思われた方も多いと思うのですが、大瀧神社の場合、後ろの本殿と手前の拝殿が一つの屋根によりくっついているので、見た目は一般的な流造りと違います。
ちなみに、拝殿は付属施設として平安時代頃から造られるようになったようです。
SDIM4798.jpg
ところで、
この大瀧神社を造ったのは大久保勘左衛門なる人物。永平寺勅使門(写真上)などを手がけた名棟梁です。なるほど、意匠は大きく違いますが、言われると大瀧神社の細部と彫刻の感じはよく似ています。
自分も実際に永平寺に足を運んで見てみたのですが、荘厳な門という感じで大瀧神社ほど特殊な感じは受けなかった。(というか、永平寺の唐門には規定で近づくとこができないのでわからなかったのが正直なところ。)
だが、ここではこの大久保勘左衛門、その個性をいかんなく発揮(?)し、いかに独創的な意匠を取り入れるかに懸けてたんでしょうか。いずれにしてもパッっと見でここまで複雑な屋根は見たことがありません。(笑)「日本一複雑な屋根」の異名もつ神社であることも頷けます。

この大瀧神社の周りには高台がまるで無く、視点は平地からですので分かる範囲は限界があるのですが、WEB上でも高い視点からの画像は見つかりませんでした。また、修理などもおこなわれているので図面が存在するはずですが、然るべくところに行かないと入手は難しいでしょう。
まぁ、こういった場合当ブログの売りである「下手CG」の出番ですので、早速この日本一複雑な屋根を単純化してみましょう。
screenshot_1484.jpg
改めて見てもめちゃくちゃ個性的な屋根ですな。
言うまでも無く、奥の一段高くなっているところが本殿、手前が拝殿です。
一つの屋根・・・というよりも、二つの屋根を巧みに交差させ一つに見せているのがわかります。
screenshot_1518.jpg
あっ、結構違うな。(笑)
唐破風の反り上がりの角度は愛嬌。屋根の構造自体は合っていると思うので勘弁してください。
あと、レンダリング済み画像だと造り込みとテクスチャが無く、思いの外ノッペリしてしまったので、分かりやすい分割線が入った未レンダの画像の方を使います。側面図(後は写真)のみからの起こしで、基本的な部材以外は簡略化しているのであまり突っ込まないでください。(笑)
大体平地目線だとこの辺りの角度が限界なのですが・・・。
ここでは一気に視線を上げていきます。
screenshot_1509.jpg
まずは正面です。同じ正面でも視点が下の場合は「あれ、何か違うか?」という程度ですが、これこそ大久保勘左右衛門が狙っていたものなのでしょうか。一見普通に見えて、実はひと味もふた味も違うぞ。というような。
いずれにせよ視点を上げるとご覧のように個性爆発です。複雑な屋根ではありますが左右はシンメトリーを保っています。
こうみるとよくわかるのですが、人々の視線がもう少し上からならば「非常に美しい神社」として名を馳せることもできそうな造型なのではないでしょうか。
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側面はWEB上にあった側面図から起こしています。こうした屋根を持ちながらバランスは崩れていませんが、本殿の千鳥破風から拝殿の唐破風まで正比率を保たないで下っていきます。本殿の唐破風のみがチト低いです。
理由はわかりませんが何となく気になる部分。
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実際のサイドビューはかなりの迫力。
screenshot_1508.jpg
と、ここまで視線を上げると下からでは分からなかった屋根の詳細がわかるようになります。
だけど、こう見ると意外と「出オチ」的なところがあって、複雑さもあまり感じないし、本殿と拝殿を一体化した良い意匠であることがわかりますね。わざと奇妙な感じを狙ったのでは無く、自信を漲らせて造っている感じがする。嫌いじゃ無いです。(笑)
それこそ江戸時代ぐらいの神社形式だと殆ど場合定型化しているんだけど、あえてそれを破りこうした意匠にすることは何らかの意味を持ちそうなのですが、今となってはよくわかりません。
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改めてやるまでもないんですが、屋根構成を色分けするとこんな感じです。
拝殿の方に目が行きがちですが、こう見ると本殿の流造り、本殿の屋根に突き刺さるように設えた千鳥破風+唐破風は大きさの違いだけで意匠はほぼ同じだと思われます。千鳥破風+唐破風の組み合わせに関しては城郭建築などで見られる優雅な意匠に似ていますね。
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総じて「日本一複雑な屋根を持つ神社」とは、単純にゴテゴテ装飾を施し「複雑」に見せているのではなく、かなりの計算により美しく仕上げられた屋根という印象です。
大瀧神社が建立された当時周りの評判というのはどうだったのか?それを考えると少し面白いです。おそらく、シンプルさに欠け「なんじゃこりゃ」的に賛否両論あったのではないでしょうか。それが400年以上経ち「日本一複雑な屋根を持つ神社」として全国から多くの人を集めることができるようになるとは当の本人も想像し得なかったことでは無いでしょうか。
棟梁である大久保勘左衛門がなぜこのような形に拘ったのか、「紙の神」を祀る神社として何らかの形を狙ったのだろうけど、本殿の頂点から流れるように拝殿の唐破風まで連続する様はもしかしたら川上御前伝説に纏わる岡太川の上流から下流までの流れと「川上御前」に対する信仰の深さを表現したものなのかもしれないと感じました。

この大瀧神社は国宝では無く重要文化財という位置付けだが、こうした面白く素晴らしい建築はまだまだこの日本には沢山ある。
日本一複雑な屋根を持つ神社。形こそ複雑だが、実はシンプルな思想のままに建てられたのかもしれない。

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